31.年輪(木目)は語る?

樹木の幹を輪切りにして、その年輪の変化を調べて、その木の周辺で起こった偶発的な出来事や様子を調べる学問があるそうです。それを年輪年代学(あるいは樹木年代学)と呼ばれています。そんな学問があるなんて、初めて知りました。

樹齢数百年の輪切り材の年輪幅の長期変動から、江戸時代の天明の大飢饉時の気温や降水量などの気候変動も読み取ることが可能だそうです。それに最近では年輪間の樹木密度や年輪の炭素同位体比(?)の分析により、気象変動を推定する方法も開発されているそうです。それこそ、樹木の年輪は気象変動の生き証人と言う訳です。

次の写真はウォルナット丸太材の輪切り面です。

この画像では必ずしも年輪は鮮明ではありませんが、いくつかのことは推測できます。

この画像の年輪などについての質問です。

一つ目は樹心(年輪の中心点)が真ん中ではなくやや右寄りにありますが、これはどうしてでしょうか?

これは「太陽が多く当たる左側が南を向いていて、成長が早まった」と思っていたのですが、調べてみると方角は関係がありませんでした。木は葉で光合成をし養分を幹に送り成長するので、光の方向は関係ないのです。関係があるのはその木が植わっている地面の傾きにあります。山は斜面が多く、斜面で重い木を垂直に立てるために斜面方向へ重心をとろうとしているのだそうです。つまり、上の画像では左側が斜面方向になります。

二つ目の質問です。年輪の濃い線の部分はいつできると思いますか?

私は木の成長が抑えられる冬だと思っていました。が、「夏から秋にかけて」が正解だそうです。日本は四季がはっきりしており、春から夏にかけて幹の繊維細胞の成長は活発になります。上の画像で言うと年輪と年輪の間のやや白っぽい部分(春材)にあたります。夏から秋にかけては細胞の中が狭い繊維細胞(夏材)をつくり成長していく。つまり、これが年輪の濃い色の部分になるのです。冬はと言うと、樹木は一時的に成長を止めるそうです。

 

参考文献
気候変動と飢饉の歴史
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chirikagaku/67/3/67_KJ00008274910/_pdf

年輪が語る森林の歴史
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsk/23/0/23_KJ00001916318/_pdf

ウォールナット 無垢フローリング
https://www.mokuzai.com/blog/2018/04/20180425.html