鋸(のこ)は中国から渡来し、7世紀頃から木材の加工に使われていたようです。ただ、初期の頃の鋸は木材を輪切りなどにする横引き用のもので、板に加工するための縦引き用鋸は室町時代以降になるようです。この大型の縦引き用の鋸や仕上げのための鉋(かんな)の普及により、丸太から板の生産ができるようになり、家などの建築材料に活用されたのではと思われます。
さて、現代はと言うと、製材用の大型機械をはじめ、この工房でも電気工具の活用なしでは仕事になりません。今回は看板用板材をカットするのに使う通常の「丸鋸」と「卓上丸鋸」をご紹介します。
下の画像は多くの方がご存知だろうと思いますが、通常の丸鋸です。
実際には直線カットする部分にカット線を入れ、添え木の板定規などを使って、真っ直ぐにカットできるようにします。それから、ケヤキなどは堅い材のカットではノッキング(カクカクする・引っかかる)を起こして、カットの途中で動かなくなる事があり、危険でもあり注意が必要です。このノッキングはカット刃の深さにもよるようで、板の厚さが40mmであれば、刃の深さは板の厚さより数ミリ深い42mm程度にするとノッキングは起こりにくいようです。
それでも、厚い材や節などの堅い部分のカットなど、ノッキングの可能性があるなと判断した場合は2度切りすることもあります。例えば50mm厚のケヤキ材では、最初に刃の深さを25mmほどでカットし、2回目に50mmをやや超える深さにしてカットするのです。木口のカット面にわずかな段差ができることもありますが、その場合はサンダーなどで均一なカット面に修正します。ちなみに丸鋸は垂直カットだけでなく、本体をやや倒して斜めにカットすることもできます。
下の画像は「卓上丸鋸」です。画像では鋸刃がピンクのプラスチックの安全カバーで隠れていますが、カット時に自動的にカバーは上がります。
「丸鋸」は小さいものカット加工は難しいのですが、この「卓上丸鋸」は小さいものの加工に向いています。カットできる幅は約300mmほど以下で、細長材のカットにも向いています。直角を含め、水平方向の角度も自由に調整できますので斜めカット、垂直方向の斜めカットもできます。
一枚板看板の制作では、看板素材の加工仕上げで「丸鋸」、「卓上丸鋸」は重要な電動工具です。
※参考文献 日本木材学会編 「木のびっくり話100」