一枚板では幹の直径が看板の幅になります。幅が800程度のケヤキやクスノキで看板を作ったことがあり、このケヤキやクスノキは樹木としてどれくらいの年数生きていたのだろうか?とか、どれくらいの大きさだったのだろうか?とか、と想いを馳せることがあります。
樹木は地球上の生物の中で、最も長生きで最も巨大であることは疑う余地がありません。種から発芽して、朽ち果てるまで、その地から一歩も動かず、生涯をその地で全うする樹木に興味はつきません。
今回はそんな古木・巨樹の樹齢と樹高について調べてみました。
■屋久島の縄文杉の樹齢は?
以前何かの資料で『屋久島にある縄文杉は樹齢推定が7200年』との記載を読んだ記憶があるのですが、改めて調べてみると、この説はどうも疑わしいようです。
約7300年前(6000年前との説もあります)に屋久島近くで巨大噴火があり、その火砕流によって屋久島を含む九州南部諸島の大型の動植物は全滅したと考えられています。それで、現在では、縄文杉の樹齢は3000~4000年(2700年という説もある)というのが通説になっています。
それでも、縄文杉は日本での最高齢の巨樹のようで、縄文時代から生命としてその地に立ち続け、生き続けているという事実には、その雄姿と共に畏敬の念を抱かずにはいられません。
ちなみに縄文杉の樹高は30m、幹周は16.1m(直径約5m)です。
屋久島の縄文杉(『ウィキペディア』より転載)
その他にも日本の巨樹についての興味深い記述がありましたので、下記に紹介します。
日本ではスギ、クスノキ、ケヤキ、イチイあたりが長寿の木であり、看板素材としてよく使っているクスノキやケヤキもその中に入っているのは、何となく嬉しくなります。
それでは『世界での最高齢の木は?』という疑問が湧いてきます。
調べてみると巨木で知られるアメリカのセコイアではなく、北アメリカ西海岸の標高3300mの山岳地帯に生息するブリッスルコーンパインが世界最長寿の樹とされており、その樹齢は4700年と推定されています。
決して巨木ではないこの「ブリッスルコーンパイン」は過酷な環境に生育する強靭な樹木で、その樹形も特徴的です。画像も含め詳しくは下記をご参照ください。
⇒ 樹齢4700年、世界最古の巨木
■樹齢の測定方法は?
樹齢は年輪を調べる方法が一番確実なようですが、木を切って調べるわけにはいきません。それで、木の幹の中心に向けて円柱状の細い穴を開けて抜き出し、その年輪から樹齢を推定する方法があるのですが、これとて正確には分からないようですし、古木を傷つけることになるので、現実的には簡単ではないようです。
また、古文書の文献を参照したり、周囲の同種倒木の年輪と幹径から推定したりする手法が使われているようですが、相当の誤差があるようです。
その他にも、「放射性炭素年代測定」の方法がありますが、これは説明を読んでもよく分かりませんでした。興味のある方は下記をご参照ください。
⇒ フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』放射性炭素年代測定
ちなみに工房にある幹径50cmほどのケヤキ看板材の木口の年輪を数えてみると樹齢60年ほどになりました。木によっては年輪がはっきりしないものも多く、樹齢を正確に調べるのは難しいようです。
樹齢がはっきりしないからこそ、古樹に対するロマンも増すのかも知れません。
■のっぽの木、太っちょの木
日本で一番高い木をネットを使って調べてみたのですが、『樹高日本一』と自称しているものも多く、どうもはっきりとしません。その中では次の2点のスギの信憑性が高いように思います。
一つは、愛知県鳳来寺山参道の石段の途中にある「傘スギ」で、樹高60m(63m・58mとの報告もあります)、樹齢800年(600年 ?)、幹周8.2m(7.5m?)とあります。
幹の径は2.5mほどでほっそりしたのっぽの巨樹です。
注:幹の周囲や直径は通常地表から1.5m程度のところを基準にしています。
また、秋田県の天然杉で、町の名所から名付けられた「きみまち杉」は樹高58mで、実測された中では日本一の杉だと宣言しています。こちらもまっすぐに伸びたのっぽの杉で、直径164cmの、推定樹齢250年とされています。どちらにしても、現存する樹木では60m前後が日本で一番高い木のようです。
それから、幹の太さが日本一の巨樹は鹿児島県の「蒲生(かもう)のクス」ではないかと思われます。その幹周は24.22m(直径約7m)で、縄文杉の16.1m(直径約5m)と比べると大きさが分かります。その迫力は画像で見ると実感できますね。
それでは、世界に目を向けてみるとどうでしょう。
アメリカ・北カリフォルニアの「ハイペリオン」と名付けられているセコイアが、その樹高115.55mで世界一高い木だと言われています。
また、上写真の「シャーマン将軍の木(General Sherman)」と名付けられたジャイアントセコイアは地球上で最も巨大な生命体と考えられています。
その樹高83.8m、幹直径は8.25m、体積1486.6立方m、そして枝の直径が2mを超えるものがあり、その大きさは測り知れません。樹齢は2000~2700と推定されています。
以下のページで左写真と共にセコイア巨樹群の迫力の画像を見ることができます。
⇒ 「セコイア国立公園の木々」
■後書き
上記の内容はそのほとんどはネットで調べたものですが、まとめるのに2日程かかってしまいました。樹齢にしても樹高にしてもその正確な実測が難しく、さまざまな記述の中から、より信憑性の高い情報の判断が難しかったことによります。それで、文中のような異説の併記もしています。
それから、巨樹のことを調べながら、60m、あるいは100mを超える樹木が数百年・数千年生き続けたことの驚異を感ぜずにはいられませんでした。台風・ハリケーン・山火事それに自然環境の変化などをくぐる抜けて、生命を維持し続けたことへの驚異です。
それと関連して、私たちには直接目に触れない、地中の「根」のことにも考えさせられました。日々変化する自然環境の中で、あれだけの巨樹を支え続け、水分・栄養分を枝葉にまで供給し続ける「根」の役割は重要であるのは明らかです。
ところが、世界一の巨樹と言われているジャイアントセコイアでも、根の深さは2m前後しかないと言われています。(セコイアの根は他の樹種に比べ浅いようです) それで、あの巨樹を支えているということは、根は地中深くというよりは地表を這うように根を広げているようです。
どの資料で読んだのか忘れてしましましたが、『30m四方に根を張っている巨樹』があるとの記述は、一見不思議な気がしましたが、当然のことかと納得もさせられました。